アントラーズ時代、トニーニョ・セレーゾ監督とこんなやり取りがあった。
練習中、監督が「利き足だけじゃダメだ。不得手な方も練習しろ!」と繰り返すので、つい
「マラドーナにも同じ事言います?」
と要らぬ事を言ってしまった。
監督は俺の顔をじーっと睨みつけた。気まずい空気。
すると以外にも
「いや、あいつには言う必要はない」
と真顔で言われた。こっちは単なる皮肉混じりのジョークのつもりだったのに・・。
「実はなっ、イタリア時代に対戦した時、俺がボランチであいつをコーナーに追い込んだんだ。センタリングのコースも確実に消したし、もうバックパスしかオプションがないはずだった。しかも奴は仕方なしに左から右足アウトにボールを持ち替えてキープした。
“完璧だ”と思ったよ。
さらに左を切りながら厳しく寄せて後ろに返させようとした瞬間・・・」
そこまで言うといきなり俺の目の前であの蜘蛛みたいな長い手足をハンドボールのキーパーみたいに凄い勢いでバタバタさせながら至近距離まで近付いて来て
「なっ、何ですのぉ〜」実際どんなに厳しい寄せだったかを必要以上にアピールし来た。
「その瞬間、奴の左足が軸足の後ろに移動したのが見えた。ラボーナだとすぐわかったよ。しかしあの位置からのラボーナならボールの勢いはたかが知れてるし、距離も大して出ないだろぉ、普通。だけどな次の瞬間、目を疑ったよ。
まるでインステップで蹴ったようなスピードでボールが俺の脇腹の真横を通過したんだ。振り返って中を見たらライナーのボールが生き物のように飛んでったのが印象的だった。ハッキリ言ってまいったよ。
“怪物だ、コイツは!”こんな奴に両足使えなんて言う必要ないだろう。
まぁ右足も相当上手いらしいがな・・・」
マラドーナの様に究極まで利き足を磨き込めたら、片足だけでも両足を使える並の選手の3、4人分以上の効果をチームにもたらすと南米人は考える。
セレーゾ監督、ディテールまで有難うございました。
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