誰の為に(選手としての誇り)
ここが踏ん張り処というゲームの前半、どうしても選手の士気が感じられない。
気持ちが入っていない。ハーフタイムのロッカーは妙に静かだった。
まるですでに試合は決まってしまったかの様に・・・。
ジーコがおもむろに口をひらいた。
「オレは今まで一度も皆に“絶対に勝て”と要求したことはない。
それはこの集団はどんな状況でも全身全霊を込めて闘う精神を忘れたことがないからだ・・」
いつもなら強烈な勢いで闘将に叱咤される場面。それだけに不気味だった。
ジーコは続ける。
「確かにこの試合に負けても世界が滅亡してしまうわけではない。
ましては勝負事だから勝ち負けはつきものだ。
だが負けるにしても負け方っていうものがある。
生中継で全国の人達が注目し、スタジアムも満員だ。君達が自分だけの為にプレーしていると考えているとしたら大間違いだ!
一人一人が自分の愛する家族、親族、恋人、友人、全サポーターの名誉と尊厳を背負ってピッチに立っるんだ!絶対、それを忘れるな!前半の様な無気力状態のままで試合を終えてみろ、君達はそれでも仕方ないだろう。自分達でやったことだからな!
しかしなっ、皆の大切な人達も他人から嘲笑され、後ろ指をさされるんだぞ!
日ごろから何の見返りも求めず一生懸命みんなを支えてくれている人達がだぞっ!」
正直考えてもみなかった、そんなこと・・・・。
日本サッカーがプロ化して間もない頃の出来事だ。


















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